クリーニング事例
2023.11.05
福山市 W様


*個人が特定できる文字彫刻部分は加工してあります。
建立後 40年~50年以上経過している夫婦墓3基と五輪塔のクリーニングです。
研磨面(光沢面)の残っている部分は比較的綺麗になりましたが、サンダー面(光沢面が取れた状態、或いは元々研磨していない部分)については、長年に亘る汚れ成分であるスケール(シリカスケール)が花崗岩に含まれるシリカ成分(ケイ素)と同質化しており、完全除去には至りませんでした。 作業中 このお墓はこのように切削して、研磨作業をしたんだんだというのが分かり感慨深いものがありました。 石屋さんは、故人の為、ご遺族の為に苦労してお墓を加工したんだと感心しました。 ご依頼いただいたお客様は、「生まれたときから、赤茶けた墓石しか見ていなかったので、石の本当の色がこんな色だったとは、びっくりしました」と仰られていました。
クリーニング前
クリーニング後大島石の特級?で作られた夫婦墓です。 ご依頼主様の祖父母様が眠っておられます。 台石各段の黒ズミはすべて除去し、 墓石全体にうっすらと茶色い膜状になっている頑固な汚れも綺麗に落としております。 水皿部分はサンダー(粗)のままで、スケールが石目の内部に入り込み、通常のクリーニングでは除去不能でしたので、砥石で削り落としました。


五輪塔の擬宝珠部分の拡大です。 五輪塔全体に茶色いスケールが頑固に付着しておりましたが、除去完了しました。 また、石の角部分が、茶色く変色しており、最初はサビかと思い諦めておりましたが、青木石ではなく大島石でできており、通常 錆びることはあまりない石でしたので、意地になって、仕事をしておりましたら、除去できました。(汗)
福山市 N様
クリーニング前
クリーニング後庵治細目の先祖墓です。 芝台(一番下の台石)は石種不明でした。 建立後 約40年以上のお墓です。 香立ての後ろ側にサビがべっとりと出ております。 その錆を吸って、水鉢と花立に錆が上がってきている状態でした。 正直、庵治石、青木石、北木石等は採掘されるブロックによってはサビが出やすい時があります。(石屋さんとしてはこれらを完全に除外することは不可能です)
作業始めますと、サビ取り専用の薬品処理し、少しずつ落ちてきました。どうやら石自体の錆ではなく、何かしらの要因でのもらい錆が付着、定着しているようです。 時間はかかりましたが、完全除去に至らずとも、ほぼほぼ錆が取れたことに満足しております。(取れない錆は庵治石の中からの錆と推測します。 これは何をしても除去は難しいです。) 他、水鉢の水皿部分はサンダーでしたので、石と同質化したシリカスケールを砥石で綺麗に落としました。 花立の皿グリ部分も、石と同質化したシリカスケールがあったのですが、皿グリ部分が浅く(一分<いちぶ>の深さ)砥石がかからず、スケールの除去は断念しました。(石を傷つける恐れがあった為)。 一通りの作業を終えたところ、お寺のお上人様からは、「ええ!! こんなに綺麗になるの?!」とお褒めのお言葉を頂戴いたしました。(<m(__)m>)
千葉県 E様
クリーニング前
クリーニング後元々は福山市に在住のご依頼主さまですが、千葉県に引っ越しをされ、なかなかお墓参りが出来ないので、何とかしてくれないかとの事で、クリーニングを承りました。こちらも建立後40年経過している墓石です。 全体写真ではなかなか判りにくいのですが、各段についた黒ズミ汚れや全体についた茶色い膜状になっている汚れを除去し、文字もペンキが激しく剥がれておりましたので再着色いたしました。 本来 ご注文外の事ですが、巻石(外柵)の前石がカラげておりましたので、手直ししました。(泥据え<基礎がなく、金具で縫っていない状態>で施工されていたので、手直しが可能でした) 因みに巻石に使われている石材は山口県の黒髪島で採掘される徳山御影でした。 現在は、ほとんど墓石用の石材としては採掘出来ておりません。(墓石に適さず建材が多い)


黒ズミは40年も経過すると落とすのに一苦労です。(石のよう固い) この黒ズミであるスケールはカルシウムスケールとシリカスケールに大別され、 墓石の場合はその複合型です。 ただし、周囲の状況によってスケールの質が若干違うように思います(感じます)。 原則としてこのスケール除去には研磨仕上げの墓石に対し酸性薬品を用いることはありません。 ほぼ道具を用いて手作業で除去します。


水鉢と花立です。 すっかり綺麗になりました。 一番下の台(芝台)については、サンダー仕上げ(非研磨仕上げ)でしたので、シリカスケール(二酸化ケイ素)が石目の奥まで入り込み、花崗岩(ケイ素成分70%)と同質化しており、弱酸性洗剤を使わざるを得なくなり、洗剤で除去しました。 洗剤使用後は、アルカリ化剤を使用し中和作業を行いました。